演奏家の手の悩み

2020.09.18 update

 ちょうど緊急事態宣言で学校がお休みになっていた頃、わが家の長男が小指、薬指の痺れと感覚がないことを訴えるようになりました。ピアノが好きで、いつも曲だけではなくハノンやツェルニーも長時間弾いている上にそれがますます長くなっている時だったので、私はピアノの練習が原因ではないかと考えました。

 病院では肘部管症候群と診断され、なるべく圧迫しないようにとのことでしたが、ピアノはどうしたらいいのか分からず。でもこれ以上悪化させたくなかったので、念のため避け続ける日々。今まで一番の趣味だったピアノを弾けないというのは側から見ていも切なく、また本人もピアノをやめないといけないかも知れないということが頭をよぎって落ち込んでいるようでした。

 そんな中、何かよい治療法はないだろうかといろいろ調べ出会った本がこちら。長年に渡り音楽家専門外来で診療をされてきた酒井直隆さんの「解決!演奏家の手の悩み〜ピアノの症例を中心に〜」。月刊ショパンに掲載された記事を書籍化したものということなので、ピアノを弾かれる方は既にご存知かも知れませんが、私はこの本に出会えて本当によかったです!

 まず最初に肘部管症候群の項を読んでびっくり!なんと「ピアノを弾きすぎたことで肘部管症候群になることはほとんどありません」とあるではありませんか!どうしてかということもわかりやすく解説され、ピアノではなく睡眠時に腕を枕にしてしまうことが原因の症例が紹介されていたのですが、これはうちの子にも当てはまりそう!と。親子共々この本を読んで大いに納得、そしてほっとひと安心。その後、日常の姿勢などに気をつけることで少しずつ回復していき、またピアノと向き合えるようになりました。


 肘部管症候群以外のページも一通り読みとても共感したのが、帯にも書いてある通り「演奏を休まずに、いかに治すか」という観点で、専門的な解説と対処法が示されているところでした。

 私も思うように身体が動かなかった時期は(今もそこからの回復トレーニング中ですが)、病気の症状と同じくらい、もしかするとそれ以上に、音楽ができないことをつらく感じました。この本はそんな心の痛みにも寄り添ってくれているようだったので、ぜひたくさんの方にご紹介したいと思いこの記事を書きました。今何もできないということに対する焦燥や、この先音楽ができなくなるかも知れないという不安。そんな思いを和らげながら解決へ向かわせてくれる一冊です。

 この本の帯の一番下に書いてある「長く、楽しく演奏を続けるために」というのは、私が今、レッスンなどでもいちばん大切にしていることかもしれません。無理なトレーニングを重ね、音楽を失ってしまうことのないように。そしていつまでも続けることができるように心身の健康を大切に。そんなことを考えながら私も研究と実践を重ねる毎日です。

 ピアノの症例が中心の本ですが、フルートを演奏する人にもきっと役に立つことがあるかと思います。よろしければぜひ読んでみて下さい^^