Couesnonのクラシカルピッコロ。

2021.10.08 update

私は古い楽器が大好きですが、「楽器は奏でてこそ」というのがモットーで、収集することにはあまり興味がなく・・

出番のない楽器はどなたかに使ってもらえた方が幸せだと手放すことがほとんどなのですが・・

めずらしく、使用機会のなさそうな楽器を購入しました!!(笑)
(もちろんひっそりと練習はします!!)


タイトルにある通り、Couesnonのクラシカルピッコロです!

じゃじゃん!

だいぶ薄くなってはいますが、素敵な刻印も読み取れます。

この楽器をオークションで見つけた時、「わぁ!こういう楽器Couesnonのカタログで見たことある!」と大興奮。

そのカタログがこちら。

このカタログは1912年のものなのですが、この時期にクラシカルも販売されていたということがとても印象的で記憶に残っていたのです。ちなみに、このカタログのフルートのページには、フランスでよく使われた5keyに、Tulouモデル、円錐木管なども!


時代はすっかり銀のベーム式になっているかと思いきや、Tulouが、また古くはDevienneがそうであったように、新しい楽器が発明されても「いやいや、昔のがいいんだよ!」なんて言いながら使っていた人がいたんだろうなぁと想像すると、とても親近感を覚えます。

こういったベーム式以前の楽器はいつ頃まで販売されていたのだろう?と気になり辿ってみたところ、

こちらが1928年↓

そして1934年にも’Historique’として掲載されていたことが確認できました!(そのあとはCouesnonのカタログそのものが見つからなかったので、もし情報をご存知の方がいらっしゃいましたらお教え下さい!)

(1932年と1934年のカタログはこちらからお借りしました。http://jeanluc.matte.free.fr/cat/catmenu.htm

そして1934年のカタログには、私がメインで使っているフルート、Couesnon Monopole Conservatoireも発見!
この楽器に関しては、モイーズ研究室の方に記事を書かせていただきましたので、ぜひこちらもご覧ください^^

マルセル・モイーズ研究室Blog
「Couesnonのカタログを辿ってみました。」

https://marcel-moyse.amebaownd.com/posts/21916116


増永弘昭先生の思い出

2021.07.02 update

私は学生時代に数回、増永弘昭先生のレッスンを受講させていただきました。先生がお亡くなりになる1〜2年前のことだったと思います。大阪出身の先生は私のことを「姫路のおばちゃん」(弱冠ハタチでしたが。笑)と呼んで、気さくに、でもとても熱心に教えてくださいました。

ただ私はみなさんご存知の通り、そのあとフランスのフルートの歴史や奏法を研究するようになり、せっかく先生が教えてくださったH・P・シュミッツ氏から受け継がれたドイツの伝統を生かせなかったことを申し訳なく思っていました。

そんな中、モイーズモデルのフルートを持ち、奏法を考えている時に、ふと、

「このリッププレートがちょっと苦手なんだよなぁ。

あっ!増永先生が教えてくださったアレをやってみよう!」

と閃いたのです。(きっとレッスンを受けられた方はお分かりのはず!)

一般の方がやると楽器を壊す可能性もあるので詳細は明かしませんが、リッププレートのカーブを変えるというもの。残念ながらモイーズモデルにはその方法は合わず、本来の設計を生かすためエッジに近づけるよう自分の奏法を変えた方がいいとわかったのですが、先生のこういったアイデアの数々を懐かしく思い出し、インターネットで色々と調べていたらこのような本が出版されていたことを知りました。

フルートは歌う 増永 弘昭

「日本を代表するフルーティストのひとりとして国内外で活躍し、2001年に若くして逝去した増永弘昭氏を偲んでのCD付き書籍。
氏が遺した論文や生前とりくんだフルート頭部管の発明にかんする解説にくわえて、多数の訳書を手がけた師H.P.シュミッツ氏からの手紙、音楽界から寄せられた追悼文などを1冊にまとめ、リサイタルのアンコール曲を中心に著者の演奏を収めたCDを付けたもの。」

まえがきには、病床でもフルートのことを考え続け、この本に収められた遺稿論文を書き上げられたことが奥様の言葉で記されていて胸が熱くなりました。

その中に、

「・・・ベーム式にはどこか欠陥があると考えており、もっと楽に音が出るようにするにはどのように改良したらよいかを長年考え続けておりました。この改良がフルートを勉強する方のお役に立てるものになるかどうかはまだ未知数ですが、主人のフルートに対する情熱を改めて感じております。・・・」

とありました。

私がモイーズモデルを研究しているのにも同じような理由があって、フルートで、もっと無理なく美しく、豊かな音楽を奏でられる可能性があるんじゃないか、といつも考えています。

最近、モイーズ研究室にアップされた室長のコラムでベーム式について取り上げられていましたが(「なぜモイーズはリングキーフルートを『ナンセンスだ』と言ったのか?」https://marcel-moyse.amebaownd.com/posts/18703116)、モイーズの考えやアイデアについて、先生ともお話できたら楽しかっただろうなぁと思います。
(先生はこの本の訳者でもいらっしゃいます!)

マルセル・モイーズ著「フルート アンブシューア,イントネーション,ヴィブラートの練習」

冒頭にも書いた通り、先生にレッスンしていただいたことを生かせず申し訳ない気持ちがありましたが、もしかすると、常識にとらわれずに探究していくことは先生に教わったのかもしれないと、遺稿論文を読んで感じました。

教えを受けるというのは、伝統や技術や哲学を継承するだけではなく(もちろんそれもとても大切ですが)、情熱を受け取りながら、背中を見て育つような部分がたくさんあるのだと思います。

私が増永先生のレッスンを受けたのは数回でしたが、その中でこんなにも伝えてくださっていたことに感謝しながら、これからも心の中で「先生!これ、いいアイデアだと思われませんか?」とお話しさせていただこうと思います。


鼻から息は抜ける?抜けない?

2021.06.17 update

私は学生時代に、H・P・シュミッツの本をいろいろと読んで実践していたのですが、その中のひとつに「軟口蓋で鼻腔を閉じる練習」というものがありました。

シュミッツ氏は、フルートを吹く時には息が鼻から逃げないように軟口蓋を閉じることを推奨し、その練習法も提案されています。私もこの本を読みながら、書いてある通りに「ンガ、ンガ」と言う練習を重ね、閉じることを習得できたのではないかと思います。

しかし。

私はフランスのフルートを吹く中で、求められている息が違うように感じ「あれ?ふわっとした息を鼻へ抜いた方が響きが綺麗じゃないかな??」とやってみたところ、なかなかよい感じ。

でも、自分の感覚だけで確証がなかったので、ひっそりと研究していたのですが、たまたま手に取ったミシェル・デボストの本で、その件に関する記述を発見しました!

「タンギングをするとき、ふつうすでに鼻から息をかすかに出していなければならない。

鼻から軽く出すことで息は動き、それだけでもう円滑に流れる。」と。

(ミシェル・デボスト著「フルート奏法の秘訣(上)」より)

やはり!

フランス語的に鼻へ響きを向かわせた方がうまくいくように感じていましたが、管楽器の奏法は知れば知るほど、言語との関わりが深いなぁと思います。

例えば、私は、ドイツに所縁のある先生からは、子音をしっかり入れること、アンサンブルでも瞬間的にそのタイミングを揃えることなどを教わってきましたが、この本の中でデボスト氏は、

「アンサンブルのアタックでは、いわば母音の音を生かすために、子音をはずす必要がある。アンサンブルの印象は、アタック(子音)の同時性からくるのではなく、全ての音色(母音)が同時に響く感じから来る。」

と言っています。

他にも口腔の使い方、舌の位置など、フランスの古い楽器を吹く中で私が感じ、実践していたことについても、答え合わせになるような記述がたくさんあって、とても励まされました。

現代は、演奏スタイルや奏法もグローバル化が進み、こんな風に真逆のことを提案される場面も少なくなったかも知れません。

でも今も決して正解はひとつではなく、いろんな方法と可能性があり、その人が何を欲するかということを大切にしながら、考え、選び、自分のものにしていってもらえたらと、私は常々思っています。

この本の序文はこんな文章が記されていました。

「本書の考えに賛成しない人はかならずいるだろう。あえていわせてもらえば、そのほうが望ましい。『強い考えは、反対する者にその強さを少し伝える。(マルセル・プルースト。ピエール・ブーレーズによる引用)』

どんな分野にせよ普遍性というものがあるとしたら、私は普遍性を目ざさない。この研究は私の研究であり、バイブルではない。

しかし、よくいうように『これは私の意見である。私はそれを人に分け与える‥』」

色々な意見を知ることは、自分の答えを見つける手がかりにもなります。
ぜひみなさんにも手に取って、デボスト氏の「意見」に触れていただきたいのですが、2003年に出版された本で、残念ながら現在は購入が難しくなっているようです。

他の事柄についても少しずつご紹介できたらと思いますので、よろしければまたお付き合い下さい!


洋銀はあつかんが好き。

2021.06.10 update

<マルセル・モイーズ研究室に投稿したコラムの転載です。よろしければどうぞ!>

さてさて、洋銀フルートをきっかけに室長と出会った私は、Couesnon Monopole(モイーズモデル)を吹くように。

フランスのオールドフルートには素晴らしいメーカーがたくさんある中で、私がこの楽器を手放せなくなった理由は・・(タイトルに書いちゃってますが)

その①

管厚が厚い!!

これ、あまり語られていないと思うんですが、私にとってはとてもとても重要でした。

洋銀のBonnevilleの響きは本当に大好きだったのですが、どうしても裏返りやすい部分があり、薄氷を踏むような感覚が常にありました。

ですが、Couesnonのモイーズモデルにはそれがない!!

(ただ狙いどころは狭い感覚があって、そのシビアさなどについてはまた別の機会にでも)

洋銀ならではの柔軟性と明るい響きはそのままに、安定性はしっかりあるところがとても良いのです。

この楽器の管厚が何ミリなのか気になるところですが、私は計測データを持っていないので(どなたかご存知でしたら教えてください!)ちょっと重さを量ってみましょう。

なんと、Couesnonは486g!!

みなさんの楽器と比べていかがでしょうか?

(比べる時はC足でお願いします!笑)

ちなみに、今私の手元にある楽器では、

Sankyo CS エチュードが387g、

マテキ943バラード(総銀製14Kヘッドキャップ付き)でも434gでした。

もちろん、あの特殊なキーの形状の分と、ソルダードとドローンの違いなどもあるので、完全な検証にはなりませんが、洋銀なのにずしっと重いということは伝わるのではないかと思います。

そして、その重さが演奏に対してなんらかの妨げになるようなことはないと感じています。恐らく、銀の楽器でここまでの管厚を持たせてしまうと、ロングトーンの響きに厚みは出ても、細かいパッセージで足を引っ張られるような重さが出るのではないでしょうか。

Couesnonを吹くと、安定性は高く、操作性は下がらず、洋銀という材質の特徴と良さを生かすには、このくらいの管厚が最適なのでは?と考えるようになりました。このような設計がどうやって生まれたのか、とても気になるのですが、資料が残っていないのが残念です(いつかどこかから出てくることを願いつつ)。

熱燗・・ではなく厚管のお話を、日本酒なら冷やが好きな助手Sawakoがお伝えいたしました。次回は「短い!!」をテーマにまた色々と書いていきたいと思います。よろしければお付き合い下さい!


Couesnon Monopoleとの出会い

2021.06.08 update

<運営のお手伝いをさせていただいている「マルセル・モイーズ研究室」https://marcel-moyse.amebaownd.com/に書いたコラムをこちらにも転載させていただきます。フランスの洋銀のフルートとの出会いが、モイーズ研究室の松田さん、そしてモイーズへと繋がったお話です。>

みなさまはじめまして。

このサイトの運営のお手伝いをさせていただいているSawakoです。

私は洋銀フルートに興味を持って調べている時に室長と出会い、そこからモイーズのことを知るようになったという少し変わったルートでやってきましたので、まずは自己紹介も兼ねてそのことを書きたいと思います。長くなりそうですが、よろしければおつきあい下さい!

私は20歳ぐらいの頃から、現代のフルートにハマりきれない自分を感じていて、私はどこに行けばいいのだろう?と放浪していました。色々な楽器を試したり、古楽をかじってみたり。そんな中である時、フランスのオールドフルートを吹いてらっしゃるオーケストラ奏者さんと出会いました。

貴重なコレクションを見せていただけることになりお宅に訪問すると、そこは宝の山!!

ズラーっと並ぶルイロットなどを拝見、そしてありがたいことに吹かせていただきました。

その時にとても印象に残ったのが、初代ロットの美しさと洋銀のBonnevilleの響き。

「maillechort」と呼ばれるフランスの洋銀フルートは初めて吹いたのですが、ひと吹き惚れとでも言うべきか、一瞬にして魅せられてしまいました。

私もこれからフランスのオールドフルートを吹きたい!と1本譲っていただくことにしたのですが、Bonnevilleに惹かれつつも、やはりコンサートなどで使うのは銀のルイロットがいいんじゃないかな?と思ったりして、8000番代のルイロットに決めました。それももちろん良い楽器だったのですが、私はずーっとどこかで、洋銀のBonnevilleを忘れられずにいました。

何年か経っても気になり続けたので、あの時のBonnevilleをお譲りいただけないでしょうか?とお願いして使うようになった時は本当に感激でした。

そして。

「洋銀フルートはこんなに素晴らしいのに、どうしてみんな使わないんだろう?

 ん??そういえば、モイーズは一生洋銀のフルートだったってどこかで読んだような・・」

(検索)

チーン。チーン。

なんだ!?

おお!!確かに違う!!

それにしても、この方、どなた??

(めっちゃ気になる)

(他も見てみよう・・)

これは興味深い!!

(それにしてもどれもしっかり吹いてらっしゃるなぁ)

美しい〜!!

というわけで、実は私はこのモイーズ研究室からではなく、YouTubeから室長を知り、ぜひお友達になりたい!!とFaceBookで探し(今のようにYouTubeからリンクはなかったんですよね)、メッセージをお送りし、現在に至ります。

そして、私もCouesnonを吹いてみたくなり、最初は室長からお借りして、その後自分のものを購入し、今はメイン楽器として使っています。

が、しかし。

Couesnonは、私がそれまでにやっていたような奏法が全く通用せず、一から考え直すことになりました。これから、Couesnonのモイーズモデルが他のフレンチフルートとどう違うのか、設計コンセプト、求められる奏法など、私が5年に及び研究&修行したことを、少しずつご紹介できたらと思います。

ではでは、これからもどうぞよろしくお願いいたします!

<転載終わり>

これから、少しずつ掘り下げる記事を書いていきたいと考えています。

こちらへの転載も続けたいと思いますので、よろしければお付き合い下さい!