ピアニストさんの書いた本。

2019.01.27 update

 エレーヌ・グリモーさん。昔ちらちらと聴いた時には、私には刺さりすぎるような肌感覚があって、実は少し苦手でした。芸術家として、そういう痛みを感じるようなものも伝えられるというのは素晴らしい資質だと思うのですが、あまり好んで聴くことはありませんでした。

 でもその印象が少し変わったのがこのアルバム。

 大好きなピアニスト、リュビモフさんのコンサートに行って聴いたシルベストロフ。グリモーさんの演奏もいいなぁ‥と、今のグリモーさんに興味を持ち始めた時に、新しい本が出版されていたのを知ったのでした。

 私は、自伝的なものかと思って購入したのですが、現実と夢の間を交差しているような物語が繰り広げられ、最初は少し戸惑ったものの、まるで村上春樹の世界のようでどんどんと引き込まれていきました。

 その中で、彼女が今考えていることを(と言っても日本語訳が出版されたのが昨年で、フランスでの出版は2005年だそう)、彼女に、登場人物に、語らせるのですが、その内容がとても素敵でした。

 音楽とは?芸術とは?生きるとは?

 深い深い問いの答えを見るけるための手がかりとなる、あたたかい光をくれる本ではないかと思います。

 少しネタバレになってしまいますが、キーパーソンとなるのが、バルビゼに似た「先生」。

 私は「あーっ!!!繋がった!!!」と叫びたい気持ちに!!

 この本も大好きなんです。青柳いづみこさんの「ピアニストが見たピアニスト」。

 リヒテル、ミケランジェリ、アルゲリッチ、フランソワ、バルビゼ、ハイドシェック。ピアニストだからこそできる分析と眼差し、そして青柳さんならではの文筆力で、それぞれの、ピアニストとしての孤独な戦いを私たちに教えてくれます。

 そして、この本の中で、青柳さんの師でもあるバルビゼは、「パリ音楽院を出てから大学で文学を専攻した」とあるのです。なるほど!グリモーさんの本に出てくる「先生」はまさに‥。

 音楽と文学の間を行き来する本を、二人のお弟子さんが書いているということ。これは先生からの影響なのか、ご本人の資質なのか。もちろんそのどちらも、かも知れないけれど‥。とても素敵なことだと思います。

 それにしても、お二人の著作を読めば読むほど、バルビゼさんという方は素晴らしい音楽家であり、教育者であったことが伝わってきます。

 この青柳さんの本の中に記述がありますが、バルビゼはランパルとマルセイユで同級生だったそう。プーランクのソナタの録音などもあり、探してみたらYouTubeでもお二人の演奏を見ることができました。

 私は瀬戸内生まれのせいか、マルセイユの音楽家にはとても親近感を覚えます。きっと瀬戸内と同じで、日差しも明るく、あたたかく、開放的なんだろうなぁ、なんて思いながら。

 一方で、私は、グールドが北に憧れたような思いを持って北海道へ来たわけですが、そういう音楽、音世界、についてはまた別の機会にでも!


釧路へ行ってきました!

2018.11.27 update

 以前釧路でレッスンをしていた時に、「ソノリテに書いてある、舌を外に出すタンギングをやってみたんですが、これってどうなんでしょうか?」と質問をしてくれた方がいらっしゃいました。

 ただ、当時の私にとって、モイーズは今よりも遠い存在だったので、「モイーズはそうしていたらしいですが、今は使わないと思います」というような答えをしたように記憶しています。

 モイーズモデルという楽器を持っていろいろ検証する中で「なるほどー!」とわかることがたくさんあって、今ならもっと多角的に解説できるのになぁ‥とよく思い出していたのですが、それを行う機会をいただけて本当にうれしかったです。(釧路でのレッスン会場からの景色。遠くに見える阿寒の山々が懐かしい!)


 吉田雅夫さんの「フルートと私」という本にこんなエピソードがあります。吉田さんがヨーロッパでジョネ先生のレッスンを受けて、その15年後に先生が来日された時に、「お前に間違ってレッスンしたから、この場で訂正する」とバッハの解釈を訂正されたそうです。

 自分を重ねるのは大変恐縮ですが、私も長年研究する中で、今ならこう言うのに!と思うことが多々あります。これはあの方に役に立ちそう!と昔教えていた生徒さんの顔が浮かぶことも。

 私は、引越しによって遠く離れてしまった方がたくさんいるので、ここで少しずつ、そんな情報を発信して行けるといいなと思っています。元生徒さんは質問や悩み相談のメールも遠慮なく下さいね^^


また釧路へ行きます!

2018.09.20 update

11月にまた釧路へ行けることになりました!
6月に続き、今年2回目。とっても嬉しいです。

前回はコンサートだったので、リハ、打ち上げ、とプライベートな時間はあまりなかったのですが、今回はのんびり2泊の予定。ご希望の方がいらっしゃいましたら、レッスンなども可能ですので、遠慮なく声をかけて下さい^^

離れてみてわかるよさというのがとてもたくさんあって、この頃、道東での日々をよく思い出しています。人々の飾らないあたたかさ、自然の大きさ。美味しいもの、素敵なお店。

あの人に会いたい!あそこに行きたい!
たくさんの人と場所が思い浮かんできます。

せっかくなので、私の大好きな場所のひとつをご紹介。片無去にある夢風舎。

https://city.hokkai.or.jp/~ohyagi/index.html

北海道の自然と向き合う大八木さんの写真と、建築家柏木茂さん設計の建物のコラボレーションが本当に素晴らしく、この自然に溶け込んだ空間の中でおだやかに過ごすひとときはとても幸せです。

この夢風舎の前で、大八木茂さんに撮っていただいた写真がこちら。


撮影している間、パラパラと音を出していたのですが、この遠くに見える牛たちが、私たちに興味を示してしまったのか、ずんずん迫ってきて、最後は私たちの方が逃げたのがいい思い出です(笑)それにしても、写真を見るだけで佐野さんの弾くアイリッシュハープの音が蘇ってきて、懐かしくなります。10年一緒に活動させていただいて、本当に楽しかったです。

素敵な場所に、人に。たくさん再会できるのを楽しみにしています!


ルネ・ル・ロワの教本から〜その1

2018.09.13 update

前回ちらっとご紹介した、ルネ・ル・ロワの教本。序文でクヴァンツの言葉が引用され、歴史、音響学と続きます。
こちらは音響学の章。

もう全部ご紹介したいくらいなのですが、要約すると、口腔は複雑な共鳴器であり、だからこそ絶えずその調節が必要である、ということ。そのためには、不自然な、過度な緊張があってはならないということ。そして以下の文章に続きます。

「口腔、歌口、および管との完全な調和は音の発生の最適条件を決定する。音の豊かさを保証するのは空気を吹き込む力ではなく、この完全な釣合にある。」

「口腔」と言うと、私たちはレッスンの中で「口の中を広く」という言葉をよく耳にしてきたと思います。けれど、最近、私は、広くしようとすることで起こる弊害もあることを認識しています。日常では使用しないような口の中のコンディションを無理に作ろうとすることによってかえって力んでしまう、そんな経験が私にもあります。

共鳴器だからより大きい方がよい、と言うのではなく、複雑な共鳴器だからこそ、柔軟に調整する、ということ。調和が大事ということ。とても共感します。そして、息の力ではない(正しい呼吸法と完全な息の保持が必要とは述べられています)、ということも。

以前にもどこかで書いたことがあるかもしれませんが、私は最初に基礎を習ったのがドイツで学ばれた先生だったので、口腔の使い方と発音に関しては、ドイツとフランスでも随分と違いがあるなぁ、と日々感じています。何が正解かではなく、何を求めているか。私は古き良きフランスの響きが好きなので、しばらくこのルロワさんの教本を掘り下げながら私自身もヒントをもらえればと思っています^^

よろしければまたお付き合いください!


ルネ・ル・ロワのこと。

2018.09.11 update

私が古き良きフランスのフルートに魅せられまず聴いたのは、フェルナン・デュフレーヌ。そして、金のルイロットを吹いていた頃のランパルの録音を集め‥。maillechortの楽器に出会ってからモイーズを聴くようになり、最近はさらに興味の対象が広がっています。いつも感じるのは、それぞれに素晴らしい!ということ。私はやはりこの時代の(と言っても随分広い、笑)フランスの奏者が大好きです。

そんな中で出会ったのが、ルネ・ル・ロワ。私よりもずっと上の世代の方は録音などにも触れていらっしゃったかも知れませんが、私にとっては「オネゲルの『めやぎの踊り 』を献呈された人」ということがまず頭に浮かび、資料の中でお名前はよくお見かけするけれど演奏の印象は浮かばない、そんな人でありました。

が、しかし!この演奏を聴いてから、ルロワさんのことをもっと知りたい!と思うようになりました。ピアノも美しい‥。

いろいろと調べてみたところ、なんと!昭和48年に日本で教本が出版されていたことを発見!

探して探して‥

ようやく手に入れることができましたー!!

ルロワさん、想像した以上に論理的な方で、私にとっては目から鱗が落ちるような解説がたくさんありました。
長くなってしまいそうなので、私がこの教本を読んで感じたこと、考えたことは次の機会に書きたいと思います!