Couesnon model-Monopole(Moyse-model)のこと。

2019.01.24 update

以前にも書いたことがあると思いますが、私は、モイーズがそうだったように、楽器のことを語りすぎるのは良くない、とある時期から考えていました。すごくこだわりを持ってセレクトしているけれど、でも、聴いてもらうのは音楽。そこに説明は必要ない、と。

特にモイーズモデルを持ってからは、この楽器の良さを演奏に生かせるまでは語らない、をモットーにしていたつもりです(チラチラとは語ったかも知れませんが、、)。

ですが、色々と考えて、今年からは以前使っていた洋銀のBonnevilleを使うことに決めたので、総まとめとして考察したいと思います。ただ、難しいのは、この楽器は奏法によって結果が大きく異なる、ということ。ネット上にある情報を見ると「音階もままならない楽器」という記述もあったりするけれど、とても美しく吹いている方もいらっしゃったり。なので、あくまでも、絶対的な評価ではなく、私が使ってみての感想、とお考えいただければ幸いです。

ポイントその1「洋銀」
実は私がこの楽器に興味を持ったのは、モイーズという名前ではなく、洋銀である、という点でした。フランスのオールドフルートに興味を持って色々な楽器を見る中で「Maillechort」と呼ばれる昔のフランスの洋銀に魅せられた私は、そう言えば、モイーズが使っていたのはどんな楽器だったのだろう?と気になって調べたのが出会いのきっかけです。LouislotやBonnevilleの洋銀を吹いていたのに、このCouesnonを吹いてみよう!と思ったのには、管厚の厚さもありました。私は長い間、管厚の厚いH足フルートを吹いていたせいか、オールドでは息が強すぎて裏返るというようなことがよくあったので、洋銀の柔軟性を発揮しながらも管厚の厚さによって暴れを防いでいるこの楽器に好印象を持ったのでした。

ポイントその2「高い響き」
私は、フルートの高い音は高めなくらいが美しいと思っています(あくまでも好みです)。もうそれは音程という概念を超えた、天界に近づく響きとでもいうか、、独特の幸福感があります。でも、大抵のオールドフルートは当然のことながら低め。442で演奏するには無理がある中で、皆さん、いろんな工夫をして使っているのだと思います。

そんな中、このCouesnon-Monopoleは、見るからに短いのです!どのくらいかと言うと、、

じゃーん。
頭部管を全部入れた状態で象嵌細工の線に合わせ並べてみました。
上から、Bonneville(4000番代)、Mateki943バラード、Couesnon-Monopole。
なんと、Couesnonはマテキよりも短いのです。

オールドでありながら、現代ピッチで演奏できる可能性を大いに感じたのでした。
(しかしそう簡単にはいかなかったのですが、、)

ポイントその3「独特のキーワーク」
私はちょうどこの楽器に出会った頃、甲状腺疾患で手足が震える、という症状が強く出ていました。リングキーを抑えるのが困難な状況があったので、このキーにはとても助けられました。それまでは「インラインリングが当たり前!」と思っていた私ですが、この楽器を知ってから、もっと柔軟に考えていいのではないかと思うようになりました。楽器に自分を合わせるのではなく、自分に楽器を合わせるような設計。無理をしないことが、結果的に自分の力を最大限引き出せる、ということをモイーズは知っていたのではないかと思います。最近、私の周囲で、ジストニアを患っている方が多くいらっしゃいます。私が経験したのと同じような、思うように動かない苦しさと戦っていらっしゃる方のためにも、キーワークに関してもこのくらい大胆な選択肢と可能性が広がるといいなと思います。

まとめ「素晴らしい楽器だけど、、」
モイーズと言えば、「楽器にこだわらなかった」「苔が生えていた」なんていうエピソードを耳にしていたので、私も当初はそんなイメージを持っていましたが、この楽器を知ってからそれは大きく変わりました。これほど、考えに考えて、革新的なことをできた奏者を私は他に思いつきません。

ただ、私にとってとても難しかったのが、この楽器はモイーズ的な響きをモイーズ的な奏法で狙った時に、効果を発揮するのではないか、という点。私は最初に専門的なレッスンを受けた時に「頭部管を内側に向けてはいけない」「そうでないと細く、暗い音になる」と言われて、そのように練習してきました。大学時代の師匠はいわゆる「内吹き」推奨でしたが、私は反発して受け入れず、、(若気の至りで今は本当に反省しています、、)。

今はそう信じているわけではなく、むしろエッジに近い方が繊細なコントロールをできるのでは、と考えているのですが、3つ子の魂100まで、、という感じで、どうしても、極端な内吹きをしようとすると、アンブシュアや発音に無理がかかってしまいます。もう今までやってきたものを全て捨ててでも吹いてみよう、という覚悟でやってきましたが、5年近く取り組んで、考えに考えて(思えば長い間修行したなぁ、、)、今年からはまたBonnevilleを吹くことに決めました。

私が理想とする響きを考えた時、あるオーケストラ奏者さんのことを一番に思い出します。
その音がしっかり聴こえる場面では天から倍音が降ってくるような。
その音がオケの中にある時には、音の輪郭は捉えられなくてもその響きが全体の彩りを作っているような。
そんな響きを生で体感させていただいたことは本当に貴重だったと思います。

その方から譲っていただいた楽器でまた新たにスタート。
不思議なもので、以前吹いていたときとは違った音が出てきています。
全てを捨ててでもやってみよう!とトライしたことは、きっと生きていると信じています。

お正月明けにまた東京からレコーディングエンジニアさんが来てくださり(今回は私は録音には参加していないのですが)写真を撮って下さいました。Couesnonとの記念写真を正装で。偶然にもこのタイミングでこんな風に撮っていただけたこともとても感慨深いです。いつも思いがけず不思議な縁が繋がり色々なことが起こりますが、今年はどんな出会いと広がりがあるか楽しみです。今年もどうぞよろしくお願い致します!