物理現象に注目せよ。

2019.01.31 update

最近は「〇〇しなさい」という本が売れるらしいので、私もそんな感じでタイトルをつけてみました(笑)

ここでよく書いている通り、奏法は、国によって、時代によって、流派によって違います。個々に違っていてもいいもの。だから、これが正解!というのはない、といつも言っています(クラシック音楽のルールなどはまた別の話として)。なので私は、その人が好きなもの、やりたいこと、を踏まえ、いちばん合うものを提案させていただけるよう心がけています。

が、しかし!物理現象については、それではいかん!というのがあるのですが、なかなかその部分を理解してもらえないことも多い気がするので、当たり前のことばかりで恐縮ですが、ちょっと取り上げてみることにしました。奏法に関してお悩みのある方はどうぞお付き合い下さい!

例えば、唇の突起が息の通り道を邪魔している場合。これは息をスムーズに流す事のできる道を確保した方がいいのは言うまでもありません。以前、レッスンの際、図解して、今はこうなっているのでこういう風に作っていきましょう!と提案させていただいたら「私、フルートに向いてないんですね、、」と言われたことがありますが、そうではなく。道に邪魔な石があるから通りやすいようにどけておきましょう、ということなのです。必ずしも中央にアパチュアを作らないといけないわけではないのですが(名人でもどちらかにずれている人はたくさんいます!)、教本に書いてある絵などを見てそう考えてしまう人は意外と多いんだなぁ、と思います。だからこそ、これが正解!こうあるべき!ではなく、物理現象としてどうか、という観点が大事!と言いたいのです。

もうひとつの例として、女性にとても多いのが、アクションによって何らかのブレを生んでいる場合。私が見てきた例では、発音しようとすると顎が動いて楽器も動いている、指を動かすとキーに着地した後に第一関節がぐにゃぐにゃしている、などなど。こういうブレがあるとどうしても響きが不安定になってしまうし、フィンガリングとしても不要な動きはない方がいいのは言うまでもありません。(ただフィンガリングに関して、私は、距離にはあまり厳しくありません。遠いより近い方がいい、というのはありますが、距離だけでなくスピードも関係するし、結構ワイルドに動かす名手だっているし、、近ければ近いほど有利、とも言い切れないと思うのです。)

このようなことが生じている場合、私はその上に何かを積み上げても砂上の楼閣にしかならないと思うので、ブレない土台作りを徹底してやってもらうのですが、お互いに、非常に根気のいる作業。でも、先送りしてしまうと、その人の成長を妨げてしまうのは目に見えていて。だから、大変でも必ずしっかり取り組みたいと考えています。

あと、どういう音を美しいと思うかは人それぞれ好みがありますが、響いているか、響いていないか、は、はっきりと断言することできます。その楽器が、しっかり響いているか。音が出ている、ではなく、響き切っているか。響き切った音というのは、自分の身体にもとても気持ちのいいもで、そしてそれが人に伝わっていくのだと思います。以前にも書いた通り「オレのミニチュアにはならなくていい!」と自分のコピーはさせなかった私の師匠ですが、この点についてはとてもとても厳しかったです。そして、その大切さを、自分が歳を重ねるほどに実感しています。

音楽を奏でるためには、いい音楽から学ぶこと、イメージを持つこと。クラシックに関しては、背景、様式などを勉強すること、などが大切だと思います。そしてそれを支えるのは音楽を好きだという気持ち。と、同時に、楽器という道具を使う私達は、それをよりよく機能させるためにはどうしたら良いか、冷静な分析とトレーニングが必要になってきます。情熱と冷静さ、感情と論理。一見相反するもののバランスをとってこそ成り立つものなのかも知れません。深い!そしてだからこそ面白いですね!

(お正月明けは関西へ。姫路好古園のお庭にいた紅白の鯉。)