私のマテキフルート。

久しぶりにマテキフルートをNさんに調整していただき帰ってきました!

展示会のお手伝いをさせていただくといつもこんな風に包んであったので、もうこの姿だけで懐かしく嬉しくなりました。

そーっと開けると‥

じゃじゃーん!!

ぴっかぴかになった私の943バラードが出てきました!

銀の楽器の年季の入った黒ずみが好きだという方もいらっしゃいますが、私は手磨きで丁寧に磨いて下さるのが嬉しいです。こういうところもマテキ時代と変わらず。

今日はまたマニアックで長くなりそうですが、この楽器の紹介をさせていただきたいと思います!

ムラマツユーザーだった私がマテキフルートと出会った経緯は以前こちらの記事に書きました。
https://sawako-flute.com/blogpost/970/

メンテナンスを教わりながらたくさんのマテキフルートを試奏させていただいて、いちばん響きが気に入った頭部管を購入したのですが、それが990のナンテンでした。

990は独特の深みがあるしっとりとした響き。より純度の高い997などもありますが、990は残りの1%に秘密があり、それが他とはちょっと違う響きを生んでいるのだと思います。

学生時代はその頭部管をムラマツに付けて吹き、就職してからボディを購入して、しばらく990REH(管厚0.43)という仕様の楽器を愛用していました。

とても気に入っていたのですが、その後フランスのオールドフルートに出会い吹くようになると、同じような軽やかさやしなやかさを持つ楽器が好きになり、中古で購入したのがこの943バラードでした。製造番号は1000番台で1988年製だそうです。

バラードはカタログのラインナップで言うと「いちばん安い総銀製モデル」なのですが、私はこの楽器の響きも大好きなのです(確かフルート工房マテキさんになってからはこのモデルはなくなったように記憶しています)。

943は943Sという巻き管のモデルも魅力的ですが、943Sがクリアで少し締まりがある響きなのに対して、943はより柔らかい響き。私はフランスのオールドを吹く中でmaillechortと呼ばれる洋銀フルートに惹かれるようになったのですが、洋銀に似た柔軟性をとても心地よく感じます。

そしてバラードはドローンモデル。ソルダードの方がしっかりした音が出ますが、私はこのしなやかさも好きなんですよね〜。

ちなみに私の記憶では、巻き管は管厚が0.40、バラードは0.38だったと思います。この差も大きいですね!

あと超マニアックな話をすると、バラードは写真の通り、キーがポイントアームではありません。以前マテキさんの展示会をお手伝いした際、943バラードと943ドローンを比較したことがあるのですが(違いはキーの形状のみ)、並べて吹き比べるとやっぱりちょっと違うんですよね〜。面白い!

いやいや、自分で書いてて、どんだけマテキマニアなんだ!と呆れてきましたが(笑)、もうひとつご紹介させてください!

私の943バラード、最大の特徴は‥

特注頭部管!!

マテキフルートにはクローバーというクラシカルタイプの頭部管があり私も使っていた時期があったのですが、私にはどうしてかナンテンがピッタリはまる‥。そこで作っていただいたのがこれ!ナンテンの形状をカットなしで製作。マテキフルートの頭部管の中でライザー高が他より低いナンテンをノーカットにすると、よりオールドフルートに近い感覚で吹けてとても気に入っています。

クラウンが金なのはそれほど深い意味はありません!

私が厄年を迎えた時、両親が厄除けに何かアクセサリーを買ってくれると言ったのですが、私は貴金属アクセサリーなんて別にいらないし!と言って‥(なんて可愛げのない!)。とにかく何か買わないと気が済まないようだったので、じゃあフルートのパーツはどう?と提案したのでした。でも14Kクラウンは今より安かったとは言え、両親が想定したアクセサリーより遥かに高く、予算オーバーかなぁなんていうお話を全てマテキさんにしたところ、古い形状のものをお安く譲っていただいたのでした。いやぁ思い出深い‥。というわけで、このクラウンは厄除け!です(笑)

クラウンの材質でもちろん響きは変わります。ただ、銀のフルートに金を少し混ぜた響きが欲しい!という場合には、クラウンよりライザーを金にした方が効果が高いというのは私の生徒さんの楽器を見ての印象です(ライザー金の943もいい楽器だったなぁ。あと個人的にはヘッドを重くするより軽くする方に興味があったりもします。ヤマハは総銀でもクラウンは洋銀だそうですね)。

超マニアックな話をとりとめもなく長々と続けてしまいましたが、ここまでお読みくださった方、ありがとうございます。私はこの6年ぐらい、ずっとCouesnonモイーズモデルの研究をしていましたが、そこから学んだことをこのマテキを吹くときにも生かすと新たな可能性が広がってきて、今年はこの楽器での演奏も増やしたいと思っています。持病があることもあってなかなか演奏活動はできずにいますが、まずは録音などからみなさまにお届けできればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします!